城北地区(3)

盛りなる花曼陀羅の躑躅つつじ かな(高浜)虚子

 句碑は、成願寺の山門を入ってすぐの右側、松山市指定天然記念物「オオムラサキ」の前に建立されている。この大株のオオムラサキの花が満開となる時期には、この句のとおり「花曼陀羅」の情景を醸し出す。上京した虚子は、この松山、北条に幾度となく帰省しており、この寺も訪れたという。
 成願寺は、松山市の西方の久万ノ台のほぼ山頂に鎮座している。久万ノ台は海抜27メートル、東には城山、その東方の石鎚山系の山々、西方は瀬戸内海に浮かぶ興居島など、高層ビルのないころは周囲が開け素晴らしい展望だったことであろう。愛媛新聞の前身「海南新聞」が企画した愛媛八勝十二景にも選ばれている。

竹林の奥の方より黒揚羽(村上)杏史

 成願寺の周辺には今も竹があるが、かつては寺の南側にうっそうとした竹林があったという。この句は、杏史が来訪の際、ほの暗い中から黒揚羽がふわりと飛来し、それを詠んだ嘱目の句。

所在:松山市久万ノ台(成願寺)

城北地区(3)番