城北地区(15)

薄墨うすずみ綸旨りんじかしこき桜かな(柳原)極堂

 伊台の西法寺は天台宗の寺院で、延暦11年(七九二)開基という歴史のあるお寺。立派なお堂が建ち並んでいたが、たびたびの火災で焼失し、今は文政8年(一八二五)再建の本堂があるだけであるが、本堂前庭の「薄墨桜」は伊予節にも歌われて、昔から有名である。「綸旨」は昔、天子のお言葉を役人が書いた文書。「薄墨」は、「綸旨」を書くための薄いねずみ色の用紙。
 伝えによると、昔、ある皇后が道後温泉で病を養われた時、勅命により一山をあげてお祈りしたところ、お元気になられたので、朝廷より、天子のお言葉が書かれた薄墨色の紙に桜を添えたものを頂いたことから、この桜を「薄墨桜」という由。一説によれば、平安時代、藤原良房の死後、火葬にした時の煙にふれて、桜の花が薄墨色になったともいう。種類から言えば山桜の変種で八重咲き。白色でわずかに紅をおびる上品な花で、4月10日頃が見頃。今のは三代目。極堂自筆。昭和27年4月建立。

所在:松山市下伊台町(西法寺山門)

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