忽那諸島(2)

伊豫の海のゆたのたゆたにたたよひて
  われやこよひを大浦に来ぬ(吉井) 勇

 明治の後半、あの与謝野鉄幹の「新詩社」に属し、「明星」に短歌を寄せた吉井勇には、脚本家という顔もあった。「命みじかし恋せよ乙女」で始まる「ゴンドラの唄」は彼の作詞であった。
 昭和に入って、放浪めいた生活をし、四国の高知の猪野野(現香美市)には草庵を結んで住んでいた。また、瀬戸内の伯方島有津にも長期滞在した。そこらを拠点として愛媛県下もよく旅しているし、この中島にも足跡を残している。
 「ゆたのたゆた」とは、『万葉集』にも使われている古語で、「ゆったりと落ちついたり、ゆらゆらと漂い動いたりするさま」を表し、勇の好きな語句のようだ。他にも使用した歌がある。

所在:松山市小浜(忽那島八幡宮参道)

忽那諸島(2)番