城下コース(1)

さくら活けた花屑はなくずの中から一枝拾ふ(河東)碧(梧桐)

 河東碧梧桐のこの句碑は、もと虚子の句碑「春水矗々として菖蒲の芽」の句碑とともに、松山市春日町(現県立中央病院)にあった松山刑務所内に、入所者情操教育のために建てられたものであるが、昭和28年8月1日、彼の一七回忌を記念してこの地に移した。石材は砥部町銚子の滝より、入所者たちが運んだもの。この句は、句碑の建つ八年前の大正13年、五二歳の時の句であって、「入所者情操教育云々」とは、本来無縁の句である。
 彼は、はじめ、「赤い椿白い椿と落ちにけり」といったような印象的、絵画的な定型の句を作っていたが、子規が亡くなって後、いわゆる「新傾向」俳句を唱え、季題や定型にこだわらない句を作った。書も、はじめは子規そっくりの書体であったのが、中国の昔の直線的な書体(六朝体)から、漢晋体を経て、この碑の文字のような、のびのびとした独特自在の書体となった。その線には詩があった。この碑のできた翌年、彼は還暦を迎え、俳句界を引退した。
 昭和7年4月29日建立。

所在:松山市二番町四丁目(市役所前)

城下コース(1)番