城下コース(15)

遠山に日の当りたる枯野哉(高浜)虚子

 明治33年(一九〇〇)11月25日、虚子庵例会での作。(子規病状悪化のため子規庵の句会例会は明治33年10月14日で中止となった。)虚子の最も好む代表的な句である。彼の長男「年尾」はこの年の12月に生まれたのであるが、後年、この句について、「季節の移り変って行く姿を見ている作者の心には人生観的なものがあると説明して来ていましたが」と父に言うと、虚子は、「そこまで言うのは月並的だね。人生観と言う必要はない。目の前にある姿で作ったものが本当だ。松山の御宝町のうちを出て、道後の方を眺めると、道後のうしろの温泉山にぽっかり冬の日が当っているのが見えた。その日の当っているところに、何か頼りになるものがあった。それがあの句なのだ。」と答えたという。虚子にとって、俳句とは日常存問の詩なのであった。「存問」とは「安否を問うこと」と『広辞苑』にある。明治24年一八歳の時、子規に手ほどきを受け、一〇年にして、虚子はこの境地に達したのである。この句碑のある所からの眺めもこの句にふさわしい。
 虚子自筆。昭和48年11月建立。

所在:松山市丸之内(東雲神社)

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