城下コース(20)
名月
新立 や橋の下より今日の月(正岡)子規
正岡子規、明治28年秋の句。「今日の月」は中秋の名月のこと、この年の名月は10月3日(木曜日)のことであった。
新立橋は、はじめ永久橋(蓬萊橋)と呼ばれ、寛政1年(一七八九)、宮内与八(藩士中の砲術の名手)が橋架連続の法を考案して石手川最初の橋として建設した。文政9年(一八二六)の新立橋古図によれば、「渡一八間、幅二間半、反り六尺」とあり、ゆるやかな反りを見せていたことがわかるが、昭和10 年、木造の橋の最後の姿を河本一男画伯が描き、金刀比羅神社の拝殿に寄贈しているから、この句の面影は、それによって偲ぶことができる。石手川のほとりに降りて、緩やかな反りを見せた木造の新立橋の下から東の方を望んだ子規の目には、東の山の端に昇る名月が、美しく眺められたことであろう。
子規が松山で名月を見たのはこの年が最後となった。句碑の文字は「寒山落木」から写しとったもの。
昭和41年4月10日建立。
所在:松山市新立町(金刀比羅神社)
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