城下コース(21)

さえずり天地金泥てんちきんでいに塗りつぶし(野村)喜舟

 「囀」は「春」の季語。「明るく方々で囀っている小鳥たちの声は、まるで金粉をにかわでとかした金泥を、あたりはおろか、天地いっぱいに塗りつぶしたようだ。」というような意味の句である。
 野村喜舟の句は、写生的傾向をとる俳風とは違って、「景情一体」という体をとり、寓意性を匂わせている―と言われているが、この句は、単なる写生句ではなく、かといって、寓意性の句というほどのこともなく、「天地金泥に塗
りつぶす」ような囀を聴くところに、この人の心も生きており、いわゆる、景情一体の句と言うべきであろうか。
 野村喜舟は明治19年金沢市に生まれ、上京して松根東洋城に師事し、昭和27 年、東洋城の後を継いで、昭和51年12月までの二五年間、俳誌「渋柿」巻頭句の選に当たり、同誌を主宰した。

所在:松山市北立花町(石手川公園)

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