城下コース(23)
薫風や大文字 を吹く神の杜(正岡)子規
正岡子規の「俳句稿」明治30年(一八九七)夏、天文の部に「立花天神祭礼」と前書きしてこの句がある。「俳句稿」の原本が見つからず、集字して刻んだものであるが、講談社本『子規全集』発刊を機として、昭和50年に原本は見つかった。この句は、明治30年3月28日付松山市玉川町の虚子宛書簡にも見える。それには、「書」と題してこの句があり、おわりに「病子規」と書いてある。
この句碑のある井手神社境内には、天満宮も祀ってあり、明治頃は旧暦6月25日(今は7月24日、25日)賑やかに天神祭りが行われた。その天神さんにあやかろうと、人々は競ってお祭り当日に大きな墨書を奉納し、これを「大文字」(おおもじ)といった。子規の書は定評のあるところだが、少年時代、父の兄佐伯半彌の許へ通ってはお家流を習ったりしたものである。唐紙や画仙紙などに二、三人の寄せ書きをして、「大きな大きなものをこしらえて、このお宮の松の木の枝などへ吊るのを楽しみにしていた」という(子規母堂談)。病床の子規はその頃を懐かしく思い出してこの句を詠んだものであろう。
昭和45年1月25日、有志により建立。
所在:松山市北立花町(井手神社)
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