風早一茶の道コース(3)

腰折こしおれの小燕子花はいちらしや

  いとしき人のなさけにも似て(吉井)勇

 この歌碑のある鎌大師堂の北に、腰折山という特異な形をした山がある。
 伝説によると、この山と鹿島山とが相撲を取り、鹿島山が沖合に投げ込まれて今の鹿島となった。相撲に負けた鹿島は、腹立ちまぎれに大きな岩を投げ付けた。それが腰折山の中腹に当たって、腰が曲がったような格好になったそうである。
 また、この腰折山は、伊予節にも歌われる「コカキツバタ」が、春先に薄紫の花を咲かせることでも有名である。正式名称は「エヒメアヤメ」。国の天然記念物に指定されており、「タレユエソウ」という別名もある。麓のエヒメアヤメ保存会によって保護され、今もやさしい姿を保っている。
 この歌は、そのほっそりとしたコカキツバタの姿に、思う人をだぶらせて詠んだもの。吉井勇は、高知県に草庵を設け、また伯方島にも長期滞在していたことから、伊予の地も度々訪れている。
 なお、この碑のある鎌大師堂は、歩き遍路の道で北条から浅海への峠の上り口にある。かつては「大師松」という巨松があったが、それも平成6年に枯死してしまった。

所在:松山市下難波(鎌大師堂)

風早一茶の道コース(3)番