「寒山落木」明治28年春の「桃花」の季語のもと、「興居島」の前書きで載っている。そのあとには「松山」の前書きで「故郷はいとこの多し桃の花」がある。日清戦争に従軍記者として出発する前に、3月中旬に帰省したときの作品であろう。
　興居島は松山の海上2㌔西方にある島である。ビワ、モモ、ミカン等の果樹栽培がさかんで、春には山畑一面が桃の花のピンクに覆われたのどかな光景がひろがる。「小富士」とは、島で一番高い280㍍ほどの山のことで、富士山に形が似ていると付けられた名である。