三津コース(14)

初汐や松に浪こす四十島(正岡)子規

「寒山落木」明治25年(一八九二)秋、天文地理の部の句。自筆を拡大したもの。「初汐」は「葉月潮」とも言って、旧暦8月15日の大潮のこと。この句に詠まれた、姿のよい松の木は枯れてしまったが、篤志家の手で蘇りつつある。句碑の背後にある海上の岩礁が「四十島」。夏目漱石が小説「坊っちやん」の中で、教頭の「赤シャツ」が「あの松を見給え、幹が真直で、上が傘のように開いてターナーの画にありそうだね」と言い、それを受けた「野だいこ」が「これからあの島をターナー島と名づけようじゃありませんか」と余計な発議をしたことから、「ターナー島」の愛称で知られている。
 また、高浜虚子著『松山道後案内 附伊予鉄道の栞』(明治37年版、昭和58年復刻)には「子住島」として紹介されている。
 なお、この句碑の隣には、

かがやきのきはみ白波うちかへし(野村)朱燐洞

がある。句は、死の直前の大正7年4月のもので、「層雲」大正7年12月号に掲載された。この年の10月31日、流行性感冒により父と二、三人の友人に見守られてひっそりと息を引き取った。二四歳の若さであった。

所在:松山市高浜一丁目(蛭子神社)

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