三津コース(16)

雪の間に小冨士の風の薫りけり(正岡)子規

 この句は、明治25年7月15日、子規は高浜虚子宅を訪問、河東碧梧桐も加わり三人で高浜の延齢館に行き、雪の間に入り詠んだもの。
 高浜虚子著『松山道後案内 附伊予鉄道の栞』(明治37年版、昭和58年復刻)には、延齢館は「海中に突出した岩の上の建物で、倶楽部組織になって居るが、貸席をも業として居る。青松を透して白帆の去来を望むべく、此邊の好風景は此楼一つで占領しているかの如き観がある。夏は海水浴場の休憩所にもなり又鹽湯の設けもある。」と紹介されている。文字どおり興居島を望む眺めの良い場所にあったのである。
 また、夏目漱石は明治28年4月松山中学に赴任し、その年の夏、漱石と子規がこの延齢館で遊んだという。
 なお、高浜一丁目の小僧坂にあったとされるこの館は、当時としてはモダンな建物であったようだが、高浜港築港工事に伴い小僧坂とともになくなった。その場所は、現在の高浜港の南、宇部三菱セメントの横にある駐車場の近くだと推定されている。

所在:松山市高浜五丁目(松山市観光港ターミナルビル右緑地帯)

三津コース(16)番