道後コース(1)

足なへの病いゆとふ伊豫の湯に
  飛びても行かなさぎにあらませば(正岡)子規

 子規歌集「竹乃里歌」の明治31年(一八九八)「故郷を憶ふ」九首のうち七首目の歌で、明治31年8月9日付の新聞「日本」に掲載された。昭和26年には、まだ「竹乃里歌」の原本が見つからず、子規の文字を一字ずつ集めてこの碑に刻んだのである。昭和26年9月19日、子規五十年祭に建立。
 「もし私が鷺だったら飛んで帰り、足の病を治したいのに」という意味の歌であって、病床の子規の望郷の歌である。明治28年、松山、愚陀佛庵から帰京途中の10月22日、大阪で結核菌のため左の腰骨が痛みだし、以後、没年までの間、殆ど病床の人となり、「足なへ」の状態であった。道後の温泉には、その昔、足を傷つけた白鷺が、岩間から出るお湯に足を浸しているうちによくなったという伝説があり、歌の「鷺にあらませば」もそれに因んだもの。
 平成6年で百年を迎えた道後温泉本館最上楼の屋上「振鷺閣」にも、本館周囲の垣の上にも、この伝説に因んだ鷺の姿が見られる。「鷺」は、今日も道後温泉のシンボルなのである。

所在:松山市道後公園(子規記念博物館前)

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