道後コース(5)

春風やふね伊豫に寄りて道後の湯(柳原)極堂

 明治30年(一八九七)4月3日土曜日、松風会例会の席題吟・「名所詠みこみ」の句である。子規にも推賞された極堂の代表句で、今日では、松山の観光宣伝のためにも、なにかというと、この句がよく引かれる。「ふね伊豫に寄りて」という中七の字余りが、いかにも伊予の松山らしい、ゆったりした風土の味を出している。もと、この句碑は、道後温泉駅前の放生池のほとりに建てられ、後、道後温泉本館の南、冠山の西麓に移されていたが、再び、放生池を埋めたてたこの放生園に戻された。極堂自筆。昭和15年2月11日建立。
 この句の出来た明治30年は、極堂にとっては実に多事であって、1月15日、松山で「ほとゝぎす」を発刊し、また、岩崎一高の妹トラと結婚をした。前年「工緻」(たくみでこまやかなこと)と子規に評された彼は、この年、子規から「錚々たる者」(すぐれた人物)と褒められている。九〇歳まで長寿を保った極堂の僅か三〇歳の時の吟である。

所在:松山市道後湯之町(放生園)

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