道後コース(32)

 圧巻

門前に野菊咲きけり長建寺(大島)梅屋

 昭和44年1月19日松山市観光課発行の小冊子、松山市民双書2の『子規・漱石と松風会』の72ページに、「松風会稿抜萃」というのがあり、日付は明治28年10月上旬。課題は「秋の暮 鳴子 星月夜 鹿 野菊」の五題で、「抜萃三十章」とあり、投句者は一〇名、選者はもちろん、子規子選とある。そのうち、感吟一〇句というのがあり、その最後に「圧巻」と朱書して、この「門前に―」の句がある。それが、今は長建寺門前の句碑そのものとなっている。いくら見ても見飽きぬ子規のすばらしい書である。それに、会稿の右肩の、「圧巻」の二字まで句碑に再現されている。
 なお、大島梅屋は、それより数日前の明治28年9月21日午後、子規、中村愛松、柳原碌堂こと極堂ら四人で病院下(今日の東雲高校下)から毘沙門阪、六角堂、千秋寺、練兵場、杉谷町とまわって帰っていることが、「散策集」中の子規の句でわかる。それが基となって、句会当日の秀句誕生となったものか。なお、「圧巻」とは、古く、中国の官吏登用試験で、最も優れた答案を、他の答案の上にのせた故事から、書物・催し物などの中で、一番優れているところのこと。

所在:松山市御幸一丁目(長建寺門前)

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